よしぶえ No.31 2001 AUTUMN

眺望

詩:滝本明 写真:細川和昭

城北ワンド付近の夕暮れ(城北菅原大橋から下流を望む)

記憶の底の水脈を辿って
船がやってくる
朝霧をついて湧き出たような
時の流れなのだ

一人だけ明日を見つめた
あの舵取りの顔は誰かに似ている
思ったが口に出さなかった
オールはすべて昨日の渦を眺めている背中なのだ

僕の岸辺はまだ今日に在って
やはり希望区と絶望区 海に向かって右岸と左岸
僕は 懸かる橋からただ船と向き合って
陽はまだ遠くただ立って

目次

淀川河川公園ニュース イベント案内 淀川の野草 親子3人「淀川源流」旅日記 淀川河川公園と私

淀川河川公園ニュース

淀川の自然を楽しむ会

8月26日(日)、あいにく曇り時々小雨の中で「淀川の自然を楽しむ会」が催されました。参加者は子ども・大人を合わせて53名、テーマは’夏の水辺’。会場となった十三野草地区は大阪地下鉄・西中島南方駅と阪急・十三駅にはさまれ、淀川左岸に広がる美しい葦原の向こうに大阪のビル群が望める所にあります。ルーペや折尺(メジャー)など七つ道具が入った小物入れの他に、当日学習する冊子を受け取り、指導の先生方から水辺などでの注意を聞いた後、数班に分かれて散開。淀川の流れの音や、貝・カニ、虫の音を聞いてみようと、耳を澄ます子どもや耳に手を添える大人達でいっぱいでした。シジミ採りの歓声やカニを追いかけ挟まれて”イターッ”と叫ぶ声が飛び交う賑やかな集団の傍らで、静かに観察のメモを取ったりスケッチする人影が印象的でした。閉会に先立ちグループごとの研究発表があり、それぞれの内容に対して先生方からコメントをもらい、拍手のうちに終了しました。夏休み最後の日曜とあって、宿題の観察記録に利用した子どもさんも多かったようです。

それぞれの網を片手にシジミ採り

中学生シングルテニス大会

7月8日(日)、淀川河川公園・赤川地区で中学生を対象にしたシングルテニス大会が開催されました。朝から天気に恵まれた当日、中学生のテニス愛好者20名が集まり、午前9時からリーグ戦方式で試合が始まりました。テニスコート周辺や上流側に架かるJR貨物鉄橋の上には、観戦する人達でいっぱい。数々の好プレーに拍手が鳴り響く中、熱戦が繰り広げられました。試合終了後はA・B・Cブロック毎に上位を表彰。各ブロックの1位は下記の通りです。

★Aブロック  1位  増田哲也さん
★Bブロック  1位  小早川潤さん
★Cブロック  1位  宮永洋輔さん

淀川わんどクリーン大作戦

7月20日(日)、城北河畔地区の足元に広がる城北わんどで、7月の河川愛護月間行事「淀川わんどクリーン大作戦」が行われました。このイベントは河川敷とわんどの清掃がメイン。開会式に引き続き、うだるような暑さの中、ゴミ拾いが始められました。わんど清掃組は、長い柄のついた熊手や大きな3本のカギ針が取り付けられた15mほどのロープで、わんど内に沈んだゴミや自転車などの粗大ゴミを収拾。河川敷清掃組は「はさみ」とポリ袋を両手に持ってゴミ拾い。汗を拭き拭き、またたく間にゴミの山ができあがりました。収拾後はラジオ番組でお馴染みのパーソナリティが司会役となり、水生生物・植物・鳥に関するトークを展開。参加者達は、わんどの底に溜まっていたゴミに驚いたり、カヤツリグサが蚊帳になる様子を見たり、早朝に捕った多種の魚が入った水槽を興味深げに観察していました。

河川敷とワンドで清掃

未明に陸閘閉扉訓練

7月8日(日)未明、淀川下流に架かる淀川大橋・阪神伝法線鉄橋・伝法大橋で、陸閘閉扉訓練が行われました。実施にあたり午前1時から2時の間、国道2号と43号が橋の手前で通行止めに。「陸閘」は防潮扉のことで、これらの3橋は堤防より低いため、万一の増水に備えて陸閘を点検し安全確認したのです。伝法大橋と阪神伝法線鉄橋の陸閘はスライド式、淀川大橋のものは扇を開くような構造になっています。淀川大橋では長さ約25m×高さ約3mの鉄扉の陸閘が20分ほどかけて閉じられ、どこからか集まった人達はこのダイナミックなショーに固唾を飲んで見入っていました。また、訓練に参加した人達はこれからの出水時期に備えて、本番さながらの真剣な表情でした。

閉扉中の淀川陸閘
周辺道路では交通規制(野田阪神前で)

イベント案内

10月

都市緑化月間

10月13日(土)

近畿都市緑化祭(大阪万博記念公園)

10月14日(日)

男子ダブルステニス大会(赤川地区)

10月20日(土)~21日(日)

秋の植木市(守口地区)

10月22日(月)

女子ダブルステニス大会(外島地区)

11月4日(日)

中学生シングルテニス大会(外島地区)

11月4日(日)

大阪淀川市民マラソン大会(枚方地区)

12月9日(日)

淀川河川公園リレーマラソン大会(太間地区)

淀川の野草

季節を告げる素敵な草花を探してみよう!文/有馬忠雄

キンエノコロ

名前の通りエノコログサの仲間だが、実(詳しくは小穂という)の付け根にある剛毛が金色であるところからこう呼んでいる。エノコログサではこの剛毛が緑色な訳だ。高水敷きの工事跡など荒れ地の先駆者になっていることが多い。密生して、特に夕日を受けているときは、金色の輪郭の中に穂のシルエットが美しい。

三島江地区

ヒガンバナ

秋のお彼岸になると、いきなりという感じで燃えるような赤い花が見られるようになる。ほんとに季節を知っているんだなあと実感させられるのが不思議なくらい。別名・地方名どの名も彼岸に咲くところから来たものと思われるが、花の頃に葉が見られないというハミズハナミズの地方名が好きだ。なぜかというと、この草の生き様をしっかり捉えているからだ。

三矢地区

コセンダングサ

草むらに遊ぶ子供達が言う「ひっつきむし」の一つである。実の先が3、4本に分かれそれぞれに刺が生えていて衣服にくっつきやすい。センダングサ・アメリカセンダングサなど、同じ特徴(ひっつきむし)を持った仲間が淀川で生育しているが、コセンダングサの花には花びらが見あたらないという特徴がある。

背割堤地区

親子3人「淀川源流」旅日記~桂川その3~

鮎の釣り人(渡月橋下流左岸から)

木々の緑が濃く深まる季節。初夏とは思えぬ猛暑の中、親子3人で汗をかきかき嵐山界隈を徘徊。寺社が多く点在する歴史の街を堪能しました。渡月橋から見る山の美しさ、穏やかな川の流れがつくるそよ風に、ほんのひととき暑さを忘れることができました。

阪急嵐山駅から中ノ島公園を抜けて桂川に向かう。蒸し暑い中を歩くこと10分、やっと河畔に到着。茶屋が連なり、抹茶アイスや桜餅などを味わう人々で賑わっていた。カワラヒワのカップルが、繁殖期の終わりを惜しむかのようにさえずる。川に目を移すと、鮎釣り人が腰まで水に浸かっている。娘はその姿を見て「おっちゃん、プール遊びしてるの?」とひと言。暑さのあまり、流れに飛び込む子ども達も多かった。 

桂川の右岸には標高375mの嵐山【A】が堂々と鎮座する。深緑の衣装をまとった山並みが川面に映り込んで美しい。渡月橋【B】に着くと、やっと風に恵まれた。水面をつたい、橋の上だけにそよ風が吹く。気持ちいい。船遊びを楽しむ人々を横目で見ながら、人力車の車夫の執拗な誘いを断り対岸へ。欄干が新しくなっているのに気づいた観光客2人組が「ニュー渡月橋やね」と話していた。

紅葉が始まった嵐山と渡月橋

次の取材地、車折神社【C】に行くため京福電鉄嵐山駅へ。町中を気長に走る1両だけの電車で10分、神社は車折駅前にあった。境内は木々の織りなす緑の回廊、まるで迷路のようである。娘は猫に導かれてウロチョロ。「ニャンコにお願いするネ」と言いながら両手を合わせていた。いくつもあるほこらの中でも、とくに境内中央にある芸能神社が面白い。鳥居や社に千社札が驚くほど貼ってある。毎年5月に行われる三船祭【D】は、この芸能神社で芸能上達を祈願し奉納するらしい。祭人は平安時代の装束をまとって船に乗り、渡月橋上流一帯で管弦や舞楽などを披露すると言う。ちなみに三船祭とは言うものの、船は20艘以上出るそうだ。

水神社が祭られる車折神社

戻りの電車は真っ赤な「のり~なちゃん号」だった。レジャー気分いっぱいで娘は大喜び。そして、嵐山駅前の天龍寺【E】に向かった。入口近くの蓮の池では、大輪の華が咲き誇る。照りつける日差しを浴びながら法堂へ。中に入ろうとすると達磨の絵を見て「おっちゃん、怖い」と娘が怯えて断念。さらにジュースをねだるので、夢窓國師が作った回遊式庭園の見学もあえなく諦める。残念。

新旧の文化が入り混ざる嵐山は多くの観光客で賑わう。いつ来ても懐かしい・新しいと思わせる街。今度は違う季節に訪れ、異なった表情を満喫したいものだ。

霧に沈む洛北(小倉山から)
天龍路庭園・曹源地

*取材/7月14日(土)
*小村家・プロフィール/父の一也はプランナー兼イラストレーター。母の郁慧はコピーライター。そして一人娘の東洋。親子3人、仲良く見聞しています。

淀川河川公園と私

親水とは自然に対してやさしく接すること

私は幼児期より三重県名張市で育ちました。名張市には、名張川が市街地を囲むように流れ、昔から名張の人々はこの川の水の恩恵にあずかり、生活してきました。私もその川の水の恩恵にあずかった一人です。名張川は淀川の支川の木津川、さらにその木津川の支川にあたるわけで、少なからず私も淀川に関係しています。その淀川と直接接するようになったのは、大学4回生の時です。4回生になって学部生が各ゼミに振り分けられ私は、環境・水工学研究室に配属されました。ここでは、「水辺の保全と活用」という活動スタイルがとられゼミ生全員で水辺での親水活動に取り組んでいます。つい先日も大阪市旭区の城北ワンドで開かれた「淀川わんどクリーン大作戦」※に参加しました。淀川は、水上から陸を眺めて見ると意外と緑が豊富で、葦など植生し私の想像していた淀川との違いに驚いたこともありましたが、陸から川岸を良く見ると空き缶やビニール袋といったゴミが多くあります。私は、このクリーン大作戦で直接ゴミを拾わずゴミ収集所で仕分けの手伝いをしていましたが、そこには多くのゴミが集まりました。中にはスクーターまで持ち込まれ、たいへん驚きました。集められた空き缶の中には、私が子供の頃に飲んでいたデザインの物まで残っており、司会者の方も"空き缶などは土に戻らず何年でも残り続ける"とお話していました。自分の捨てるゴミには、責任をもってもらいたいものです。

ゼミでは、夏になると「淀川流域水環境交流会」という交流会を開催します。これは毎年、淀川流域のどこかで淀川流域の人々が集まりシンポジウムと組立式10人乗りカヌー(Eボート)でレースを行う行事です。初めて開催した2年前の平成11年は滋賀県の琵琶湖で、その翌年平成12年は京都府日吉町の日吉ダムで、そして今年は大阪府枚方市の枚方水辺公園(枚方地区)で開催しました。私は、生まれて初めてこのようなイベントの運営に回り、交流会の実行に従事しました。初めて開催した年(4回生の年)は、「こんなにしんどい目をしてまで開くものなのか。」と思っていましたが、交流会に参加して下さった方々の真剣なまなざしや楽しそうな顔を見ていると、私はこんな貴重な体験をできたことに本当に良かったと思いました。特に私が面白いなと感じたことは、私の親と同じくらいの歳の方々と、とても気軽にお話しができることできした。

この交流会で私は、「川の会・名張」という会に所属している方と出会いました。初めてその会の名前を聞いたとき、「同じ名張の人だ」と思いすぐにお話をしました。恥ずかしながら私は、十数年間名張で暮らしてきたにもかかわらず、このような会があることも知りませんでした。その方ともすぐに打ち解けあい、同じ名張に住んでいるのならすぐにでも「川の会・名張」に入りなさいという事で、私は入会しこの会の行事に参加するようになりました。このときは今までの自分とは違い、この会の行事に参加してみたいという気持ちで一杯でした。それからの私は、河川での親水活動とは"人々のやすらぎの時を得る活動"は当然のことながら、それともう1つ"自然に対してやさしく接することができるようになる活動"なのだということを痛感するようになりました。

まだ、ゴミを片付けない人や故意に捨てていくような人が多くいると思います。そういった人たちに親水活動を通じて、河川のすばらしさ、河川の尊さを知ってもらうことが、より良い河川づくりの第一歩となると思います。

※「淀川わんどクリーン大作戦」ニュース参照。

林 辰郎

ナンバー17

林 辰郎(はやし たつろう)
昭和51年7月28日兵庫県西宮市生まれ。昭和55年三重県名張市に移り住む。
平成11年4月摂南大学「環境・水工学研究室」に配属、「淀川愛好会」、「川の会・名張」に入会。平成12年4月摂南大学大学院に進学。現在、大阪府東大阪市に下宿。

ページTOPへ